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まるで温泉に入っているような、快適な日々のための閻魔帳

銀二貫 (著:高田郁)

銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)

 

時代小説ながら、時代背景や言い回しなどを、ほとんど気にせずに気軽に読めるようになっており、読後感のさっぱりした、爽やかな気持ちになる本だ。

仕事でもスポーツでも何かに取り組もうとしている人にとっておすすめの本である。
この本の主人公(松吉)のように、周囲の人たちに愛される存在になって、陰ながら支援されながら本懐を遂げたいと思えるのではないだろうか。


寒天問屋の主である和助は仇討ちの現場に出会い、銀二貫を払って仇討ちを受けた侍の子・鶴之輔を助ける。
その鶴之輔は、松吉と名前をかえて商人の丁稚として寒天問屋で働きはじめるのだが、銀二貫は大金であったため、番頭・善次郎は松吉に対して常に厳しく接していく。
それでも松吉は、主・和助や周囲の人たちから見守られながら成長していき、やがて番頭・善次郎も松吉を認めるようになっていく。

松吉への、料理人・嘉平とその娘・真帆の思いやりも読みどころだ。
生きていくための仕事と割り切っている松吉は、寒天の素晴らしさを知らない。
嘉平と真帆は、寒天がどんなに素晴らしいものなのかを松吉に見せ、懸命に取り組む価値があるものだと身をもって伝える。

今の時代でも大切にしたい、いくつかの価値観が、この本の中では柱になっている。
例えば、報恩謝徳・一所懸命・因果応報・筋を通すなどだろう。
さらりと目で追って読むのもよいが、心理描写も細かいのでゆっくり味わって読むとさらに楽しめる本だ。

ところどころに山場があり、ドラマの原作に向いているだろうと思っていたら、すでにドラマ化されているのだそうだ。

現代語訳 信長公記(著:太田牛一)

 

現代語訳 信長公記 (新人物文庫)

 

原文は読んだことはないが、本書は現代語訳され、適度に注釈があり、比較的読みやすくなっている。
著者の太田牛一が、本編(例えばP.116)に出てくるのも、興味深い。原文の表現はわからないが
「知行を増やしてくれた。」という表現に、客観的表現では失礼に当たると推測される当時の雰囲気が伝わってくる。
本能寺に至るまでの部分については、その後に確認されたであろう事実関係が記載されておりドキュメンタリータッチである。太田牛一の文才や努力により、信長の生きた時代のことを知ることができているのだろう。